まだ寒くてコートに身を委ねる日、しかしいつもよりも少しだけ暖かな陽がさしていた。
以前も書いたが、僕からは決してマッチョイズムを感じることなんてないと思う。髪は長いし、顔も中性的。身長177cm体重はよく変動するけど53キロを超えたことなんて1度もない貧弱な身体。風邪だってよく引くし、骨なんて何度折ったか分からない。お米は茶碗1杯でお腹いっぱい。
男らしい見た目には憧れたけど、結局肉体的に厳しかった。運動会にプール、みんなで行った海、幾ばくかあった悔しかった日。
けれども、2021年2月18日。
僕は、このままで良かったんだと感じることができた。
M A S Uにとって初めてのショーは、僕の心をやはり動かした。
幼少期に、誰しもが経験したであろう大人に矯正されることの危うさを表現したムービーが終わり、舞台が暗くなる。ポツポツポツポツと、音楽が鳴り始めた。
さぁ、1stルックだ。
ポップコーントップスにシースルーのボトムスから始まるなんてズルいじゃないか!!今シーズンのM A S Uも絶対に最高だ!早く全部がみたい!
僕は、確信と同時に、少し目頭が熱くなっていた。
僕の、いや、M A S Uのファンである僕らの夢が始まる。
小さい頃憧れたペロペロキャンディーのような柄のニット、目を凝らして初めてわかる兎のモノグラム柄、ミンクのファーのプリントがされたシャツやスカーフ、クローバーのスタッズが付いた白のライダース、エムエーエスユーになって初めてのシーズン、そして別注で作ったブーツを履いてるルックもあるし、花柄のブーツも素敵。
あれも良い、これも良い、そういえば後藤さんとこういう話をしたな、これは後藤さんを感じることができる服、ショーだ。なんて過去に耽りながらも集中して観ていると約10分間なんてほんの一瞬で終わった。
↓ONLINE SHOP↓
M A S Uの1st deliveryがお店に届いた。有難いことに入荷してから今日まで、入ってきたほとんどの商品が完売かラスト1点になった。2nd deliveryは、明日入荷予定で再び早く無くなりそうなので、気になる方はすぐチェックして頂きたい。
M A S Uは、ここパレットで熱狂を起こしている。この熱狂は、これから間違いなく大阪を超え日本、そして世界を巻き込んでいってくれるだろう。M A S Uによる僕らの夢が始まる。
優しさを感じることができる愛情こもったお洋服。M A S Uを通して、そして我々の取扱ブランド全てが混じり合うことで、多くの人々に自由なメンズファッションを楽しんでいただければ、このブランドを取り扱っているセレクトショップの人間として本望です。
M A S U 2021-22 FALL WINTER
"codes"
START.
Dear A Man Like You were (I was),
M A S U(エムエーエスユー)の2021年秋冬コレクションで掲げられた「codes」は、デザイナーの後藤愼平が手掛ける、2018年秋冬のリブランディング以降のワークに共通するワードとして浮き上がってきたものでした。
そして「codes」は、ブランドとして初となるファッションショーにおいても、愛知県の名古屋市、都市の中心からいくばくか離れた、大きな緑地や湿地もある自然豊かなエリアに生まれ育った彼の、ルーツや嗜好、偏愛を、暗示的に言及するのにふさわしいワードでもあります。PERIMETRON(ペリメトロン)の佐々木集をディレクターに迎えたショーテーマは、「Dear A Man Like You were (I was),」と名付けられました。
ヴィンテージウェアを愛するデザイナーは、コレクションのテーマと関連する衣服の歴史や背景を紐解いていくことに余念がありません。ことさら、メンズウェアは、時代性、当時のデザイン哲学や美学、それらを内包した文脈(コンテクスト)のうえに成り立っており、素材、フォルム、カッティング、ディテール、付属、縫製、加工方法といった意味合いの集合体に、端的な名がつけられていると考えます。
彼は、さまざまな意味が地層のように重なっていること、そこに潜む「細部」を知ることに喜びを感じるのだといいます。
彼は、深層に潜り込み、再発見を繰り返していきます。それらは愛すべき稚気を帯び、まるでゲームに講じるかのようにコードをつまみあげ、裏返し、ひねり、軽妙に意味をすり替えながら、コードとコードを組み合わせていきます。これらがM A S Uのデザインアプローチに欠かすことができません。ヴィンテージを研究し、オーセンティシティを「復元」によって成立させるのではなく、現代の空気のなかで呼吸させることに結びついていきます――たとえば、マスキュリンな軍服を毛皮で仕立てること、シルクの生地を粗く扱うこと、古めかしいハンカチーフの刺繍と男性的なシルエットをミックスさせること、ポップコーントップスをメンズウェアとして発表することは、彼らにとって、決して奇抜なデザインではないのです。
「大袈裟にいうと、歴史の蓄積が生み出した記号の強さをリスペクトしながらも、現代を生きる自分自身の目を持ち、人のつくった記号に踊らされたくないんです。たとえ、丸だと思っていたものだとしても、裏に回り込んで見たら尖っていた。そういう発見、探索が大事なんじゃないかと常々思っています。たとえば、疑問視されない固定観念や行き過ぎたマッチョイズムが人々の苦しみを生みかねないことは明らかになっています。そうしたことに目を凝らし、メンズファッションを自由にしていくことが今季のテーマのひとつにありました」
メンズウェアではなく伝統的にはレディス、あるいはメンズウェアでは用いられにくいファブリックのチョイスは、シフォンやファンシーツイード、ダスティピンクを含むカラーパレットにあらわれています。セットアップやスリーピースで展開されながらソフトなテーラリングをベースに、ベルトループのないコンフォータブルなワイドパンツ、マフラーの襟つきのジャケットベスト、プリーツスカートを発展させたスラックス、ラビットのモノグラム柄、マダムチックな花のキルティング模様、ミンクのファーコートをプリントしたシャツやスカーフにも今季のマインドセットがあらわれています。不規則に散りばめられたラメ、あるいは、ハートを描くメタルスタッズを組み合わせるとクローバーになること、ベルト裏の仕様に採用された懐かしい壁紙風のハンドドローイングで描かれた花束柄は、優しさに重きを置くM A S Uが投げかける、柔軟な眼差しのメタファーです。
「些細な文脈をすり替えたようなデザインに共感できる人は、きっと細やかなことに気が付ける、優しい人なのだと思います。テーマにそぐったデザインを徹底し、矛盾や無意味さを混在させずに生み出す『純度』は目にはうつらないかもしれません。が、 そうした姿勢を貫いてブランドを前進させていくなかで、共感を持って袖を通してくださる方が増えてきました。10歳にも満たない頃、油画を描く祖母が暮らす家を訪ね、クローゼットを物色してロックスターのような格好をして遊んだことを今でも鮮明に覚えています。しばしば私は、選んで着ること、変身できること、そして、それを見た人々のリアクションを楽しんでいたあの頃の自分を思い出しています」
M A S U(エムエーエスユー)の2021年秋冬コレクションで掲げられた「codes」は、デザイナーの後藤愼平が手掛ける、2018年秋冬のリブランディング以降のワークに共通するワードとして浮き上がってきたものでした。
そして「codes」は、ブランドとして初となるファッションショーにおいても、愛知県の名古屋市、都市の中心からいくばくか離れた、大きな緑地や湿地もある自然豊かなエリアに生まれ育った彼の、ルーツや嗜好、偏愛を、暗示的に言及するのにふさわしいワードでもあります。PERIMETRON(ペリメトロン)の佐々木集をディレクターに迎えたショーテーマは、「Dear A Man Like You were (I was),」と名付けられました。
ヴィンテージウェアを愛するデザイナーは、コレクションのテーマと関連する衣服の歴史や背景を紐解いていくことに余念がありません。ことさら、メンズウェアは、時代性、当時のデザイン哲学や美学、それらを内包した文脈(コンテクスト)のうえに成り立っており、素材、フォルム、カッティング、ディテール、付属、縫製、加工方法といった意味合いの集合体に、端的な名がつけられていると考えます。
彼は、さまざまな意味が地層のように重なっていること、そこに潜む「細部」を知ることに喜びを感じるのだといいます。
彼は、深層に潜り込み、再発見を繰り返していきます。それらは愛すべき稚気を帯び、まるでゲームに講じるかのようにコードをつまみあげ、裏返し、ひねり、軽妙に意味をすり替えながら、コードとコードを組み合わせていきます。これらがM A S Uのデザインアプローチに欠かすことができません。ヴィンテージを研究し、オーセンティシティを「復元」によって成立させるのではなく、現代の空気のなかで呼吸させることに結びついていきます――たとえば、マスキュリンな軍服を毛皮で仕立てること、シルクの生地を粗く扱うこと、古めかしいハンカチーフの刺繍と男性的なシルエットをミックスさせること、ポップコーントップスをメンズウェアとして発表することは、彼らにとって、決して奇抜なデザインではないのです。
「大袈裟にいうと、歴史の蓄積が生み出した記号の強さをリスペクトしながらも、現代を生きる自分自身の目を持ち、人のつくった記号に踊らされたくないんです。たとえ、丸だと思っていたものだとしても、裏に回り込んで見たら尖っていた。そういう発見、探索が大事なんじゃないかと常々思っています。たとえば、疑問視されない固定観念や行き過ぎたマッチョイズムが人々の苦しみを生みかねないことは明らかになっています。そうしたことに目を凝らし、メンズファッションを自由にしていくことが今季のテーマのひとつにありました」
メンズウェアではなく伝統的にはレディス、あるいはメンズウェアでは用いられにくいファブリックのチョイスは、シフォンやファンシーツイード、ダスティピンクを含むカラーパレットにあらわれています。セットアップやスリーピースで展開されながらソフトなテーラリングをベースに、ベルトループのないコンフォータブルなワイドパンツ、マフラーの襟つきのジャケットベスト、プリーツスカートを発展させたスラックス、ラビットのモノグラム柄、マダムチックな花のキルティング模様、ミンクのファーコートをプリントしたシャツやスカーフにも今季のマインドセットがあらわれています。不規則に散りばめられたラメ、あるいは、ハートを描くメタルスタッズを組み合わせるとクローバーになること、ベルト裏の仕様に採用された懐かしい壁紙風のハンドドローイングで描かれた花束柄は、優しさに重きを置くM A S Uが投げかける、柔軟な眼差しのメタファーです。
「些細な文脈をすり替えたようなデザインに共感できる人は、きっと細やかなことに気が付ける、優しい人なのだと思います。テーマにそぐったデザインを徹底し、矛盾や無意味さを混在させずに生み出す『純度』は目にはうつらないかもしれません。が、 そうした姿勢を貫いてブランドを前進させていくなかで、共感を持って袖を通してくださる方が増えてきました。10歳にも満たない頃、油画を描く祖母が暮らす家を訪ね、クローゼットを物色してロックスターのような格好をして遊んだことを今でも鮮明に覚えています。しばしば私は、選んで着ること、変身できること、そして、それを見た人々のリアクションを楽しんでいたあの頃の自分を思い出しています」
そういえば最近手にした雑誌に書いてあった言葉が、まるで後藤さんであり、MASUであると感じたので最後に紹介したい。
ピュアな時代。
ピュアな美しさはダイレクトに人の心を揺さぶる力を持っている 足早に推移する時代の中では、美しさの基準も移り気に変わっていくけれど、例えばパンクやアバンギャルドの定義が、表現のスタイルのことではなくて、内側に潜むスピリチュアルなものだとある日気がつくように、ピュアな美しさは本質的な強靭さで人の官能に届くものだ。
ミスター・ハイファッション1998年6号
河村伊将
PALETTE art alive
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